
「特別純米」「純米」「純米吟醸」は名前がよく似ていますが、違いを理解するポイントは、主に 精米歩合・造り方・特別純米酒の説明表示要件 です。
純米酒には現在、精米歩合の数値要件がありません。一方、純米吟醸酒は精米歩合60%以下で「吟醸造り」を行うことが要件です。
特別純米酒は、香味・色沢が特に良好で、使用原材料や製造方法などの客観的事項によって「特別」である旨を説明表示するものです。精米歩合をその理由として説明表示する場合は、60%以下であることが求められます。
ただし、「特別純米だから純米吟醸より上」「純米吟醸なら必ずフルーティー」と単純に判断することはできません。
この記事では、特別純米酒・純米酒・純米吟醸酒の違いを比較しながら、ラベルを見て自分に合った日本酒を選ぶポイントまで分かりやすく解説します。
情報源・確認時点について:
本記事は国税庁「清酒の製法品質表示基準」と日本酒造組合中央会の公開情報を主な参照元とし、2026年9月時点で内容を確認しています。日本酒の味や香りは銘柄・原料米・酵母・製法・熟成などによって異なるため、特定名称だけを根拠に味を断定していません。
特別純米・純米・純米吟醸の違いを一覧表で比較
まずは、3種類の違いを一覧で確認してみましょう。
| 種類 | 主な原料 | 精米歩合 | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| 純米酒 | 米・米こうじ | 数値要件なし | 香味・色沢が良好 |
| 特別純米酒 | 米・米こうじ | 60%以下、または特別な製造方法 | 特別である旨を客観的事項によって容器・包装に説明表示し、香味・色沢が特に良好 |
| 純米吟醸酒 | 米・米こうじ | 60%以下 | 吟醸造り、固有の香味・色沢が良好 |
国税庁の現行基準では、特定名称酒には、白米の重量に対するこうじ米の重量割合を15%以上とする要件もあります。
純米・特別純米・純米吟醸の違いはここ
純米酒
特別純米酒
純米吟醸酒
特定名称酒には、白米の重量に対するこうじ米の重量割合を15%以上とする要件もあります。
3種類とも米・米こうじが基本原料
純米酒・特別純米酒・純米吟醸酒は、いずれも米と米こうじを使い、醸造アルコールを使用しない特定名称酒です。醸造アルコールを使用する吟醸酒や本醸造酒とは、ここが大きく異なります。
そのため、3種類を比べるときは原料だけでなく、精米歩合や製造方法まで確認すること が大切です。
違いのポイントは精米歩合と吟醸造り
精米歩合とは、玄米を削ったあとに残った白米の重量割合です。
たとえば精米歩合60%なら、玄米の表層部分を40%削り、60%を残して使用したことを意味します。数字が小さいほど、多く削っていることになります。
純米吟醸酒には「精米歩合60%以下」に加え、吟醸造りの要件があります。一方、純米酒には現在、「○%以下」という精米歩合の数値要件はありません。
特別純米酒では、精米歩合や特別な製造方法などに加え、何が特別なのかを客観的事項によって説明表示することも重要なポイントです。
純米酒とは?3種類を理解するための基本

純米酒は、白米・米こうじ・水を原料として造られ、香味と色沢が良好な日本酒です。
「純米」という名前のとおり、特定名称酒としての純米酒には醸造アルコールを加えません。純米吟醸酒や特別純米酒も同様です。
純米酒には現在、精米歩合の数値要件がない
現在の表示基準では、純米酒に「精米歩合70%以下」といった数値要件はありません。
国税庁によると、以前は純米酒に精米歩合70%以下という要件がありました。しかし、国税庁による2003年の表示基準改正を経て、2004年1月1日から精米歩合の要件が削除 されました。
したがって、現在の純米酒を「精米歩合70%以下の日本酒」と説明するのは古い情報です。
ただし、精米歩合の数値要件がなくなったからといって、特定名称酒としての要件そのものがなくなったわけではありません。特定名称酒には、白米の重量に対するこうじ米の重量割合を15%以上とするなど、別の要件があります。
「純米=精米歩合70%以下」ではないので注意
2003年の改正以前は、純米酒に精米歩合70%以下という要件がありました。そのため、旧基準を前提とした資料では「純米酒=精米歩合70%以下」と説明されていることがあります。
以前の基準としては正しいものの、現行基準には当てはまりません。日本酒について調べるときは、情報の公開時期にも注意しましょう。
特別純米酒の「特別」とは何が特別?

特別純米酒の「特別」は、単に高級感を演出するための言葉ではありません。
国税庁の清酒の製法品質表示基準では、純米酒のうち香味・色沢が特に良好で、使用原材料や製造方法などの客観的事項によって、特別である旨を容器・包装に説明表示するものに「特別純米酒」という名称を使用できます。
精米歩合を「特別」の理由にする場合は60%以下
国税庁の概要表では、特別純米酒について「精米歩合60%以下又は特別な製造方法」と整理されています。
ただし、精米歩合が60%以下というだけで、すべての純米酒が自動的に特別純米酒になるわけではありません。
特別純米酒として表示するには、香味・色沢が特に良好であることに加え、何が特別なのかを使用原材料や製造方法などの客観的事項によって説明表示する必要があります。
精米歩合を特別である理由として説明表示する場合は、その精米歩合が60%以下であることが求められます。
「特別純米」の特別は何で決まる?
精米歩合を「特別」の理由にする場合
説明表示する精米歩合は60%以下
精米歩合を特別である理由として示す場合に求められる条件です。
特別な製造方法などを理由にする場合
客観的事項による説明表示が必要
造り手が単に「特別」と考えているだけではなく、その理由を容器・包装に説明表示します。
精米歩合が60%以下というだけで、自動的に特別純米酒になるわけではありません。
特別な製造方法などの場合は客観的な説明表示が必要
精米歩合以外の製造方法などを理由として「特別純米酒」と表示するケースもあります。
この場合も、造り手が単に「特別だと考えている」というだけではなく、容器・包装に客観的事項による説明表示が必要です。
特別純米酒を見つけたら、表側の商品名だけでなく裏ラベルなども確認すると、その酒の「特別」の理由を理解しやすくなります。
「特別=純米吟醸より上級」という意味ではない
特別純米酒の「特別」は、純米吟醸酒より上の等級を意味するものではありません。
特別純米酒と純米吟醸酒は、どちらも精米歩合60%以下になる場合があります。ただし、純米吟醸酒には「吟醸造り」という明確な製造上の要件があります。
特別純米酒と純米吟醸酒は上下関係にある等級ではなく、それぞれ異なる表示要件を持つ特定名称酒 と理解すると分かりやすいでしょう。
純米吟醸酒とは?特別純米酒との最大の違い

純米吟醸酒は、精米歩合60%以下の白米・米こうじ・水を原料とし、吟醸造りによって造られる日本酒です。
特別純米酒との大きな違いは、「吟醸造り」が要件になっていること です。
純米吟醸酒には、精米歩合60%以下であることに加え、吟醸造りを行い、固有の香味・色沢が良好であることが求められます。
純米吟醸酒は精米歩合60%以下
純米吟醸酒では、原料米の精米歩合が60%以下である必要があります。
たとえば精米歩合60%なら40%、55%なら45%を玄米から削った計算です。
ただし、「米をたくさん削るほど必ずおいしくなる」という意味ではありません。精米歩合は日本酒の造りを知る重要な指標ですが、味の優劣を示す点数ではないからです。
純米吟醸酒には吟醸造りの要件がある
国税庁は吟醸造りについて、伝統的にはよく精米した白米を用い、低温でゆっくり発酵させ、特有の芳香を持つように醸造する方法と説明しています。
日本酒造組合中央会も、純米吟醸酒について、精米歩合60%以下の白米・米こうじ・水を原料とし、吟醸造りで造られるものと説明しています。
つまり、「純米吟醸」の「吟醸」には、単に米を多く削っている以上の意味があります。
精米歩合が同じでも名称が異なる理由
精米歩合60%の特別純米酒と、精米歩合60%の純米吟醸酒が並んでいることもあります。
数字が同じでも名称が異なるのは、精米歩合は特定名称を決める条件の一つであり、それだけで名称が決まるわけではないから です。
純米吟醸酒には吟醸造りが要件として明記されています。一方、特別純米酒には「香味・色沢が特に良好」であることや、特別である理由を客観的事項によって説明表示することなど、別の要件があります。
精米歩合だけを比べて「同じ酒」と考えないことがポイントです。
同じ「精米歩合60%」でも名称が違う理由
特別純米酒
- 精米歩合や特別な製造方法など
- 香味・色沢が特に良好
- 特別である理由を客観的事項によって説明表示
純米吟醸酒
- 精米歩合60%以下
- 吟醸造りが要件
- 固有の香味・色沢が良好
精米歩合は名称を決める条件の一つ。
精米歩合だけで特定名称が決まるわけではありません。
味や香りはどう違う?名称だけでは決められない

特別純米・純米・純米吟醸を選ぶときは、特定名称だけで味を決めつけないこと が大切です。
原料米、酵母、水、発酵条件、酒質設計や製造工程などによって、同じ純米吟醸でも香りや甘辛、酸味、口当たりは変わります。
「純米だから必ず濃厚」「純米吟醸だから必ず甘くフルーティー」と考えず、個々の商品説明も合わせて確認しましょう。
純米吟醸酒では吟醸香が特徴の一つ
吟醸造りでは、特有の芳香を持つように醸造することが特徴の一つです。
日本酒造組合中央会の日本酒用語集では「吟醸香」について、吟醸酒に特有の芳香であり、酢酸イソアミルやカプロン酸エチルなどのエステルが主体と考えられていると説明しています。
そのため、香りを重視して日本酒を選びたい人にとって、純米吟醸は注目しやすいカテゴリーです。
ただし、実際の香りの強さやタイプは、銘柄や酒質設計によって異なります。
特別純米酒・純米酒も銘柄によって味わいは大きく異なる
純米酒や特別純米酒は「米の旨味を感じやすい」などと紹介されることがありますが、すべての銘柄に同じ特徴が当てはまるわけではありません。
軽快な純米酒もあれば、しっかりした味わいの純米吟醸もあります。
名称は「どのような要件で造られた酒なのか」を知る手掛かりとして使い、実際の味わいは商品ごとの説明と合わせて判断するのがおすすめです。
「純米=濃厚」「純米吟醸=フルーティー」と決めつけない
初心者向けの説明では、「純米は米の旨味」「純米吟醸はフルーティー」と表現されることがあります。
大まかな傾向を知る入口としては便利ですが、絶対的なルールではありません。
特定名称は味のランキングではなく、主に原料や精米歩合、製造方法などの条件を理解するための分類 と考えると、商品選びで迷いにくくなります。
特定名称だけで味は決まらない
特定名称から確認する条件
造りを理解するための手掛かり
実際の味や香りに関わる要素
商品ごとに異なるため、個別の説明も確認
特別純米・純米・純米吟醸はどれを選べばいい?

迷ったときは、「どれが上か」ではなく、自分がどんな日本酒を飲みたいのか を基準に選びましょう。
香りを重視するなら純米吟醸を候補にできますが、食事との相性や飲用温度まで特定名称だけで判断することはできません。個々の商品の香味説明や推奨されている飲み方も確認することが大切です。
名称の格ではなく香り・味・飲み方で選ぶ
「特別」と書かれているから上、「吟醸」と書かれているから高級、と考える必要はありません。
それぞれの特定名称には異なる要件がありますが、それがおいしさの順位を示しているわけではないからです。
冷酒で香りを楽しみたいのか、食事と一緒に飲みたいのか、燗酒も試したいのか。こうした好みや飲み方に加え、商品の香味タイプや酒蔵が示す飲み方も確認しながら候補を絞るとよいでしょう。
初めてならラベルの精米歩合や製法も確認する
特定名称酒では、原材料名の表示の近接する場所に精米歩合を併せて表示することとされています。
日本酒を選ぶときは、商品名だけでなく、ラベルなどにある原材料、精米歩合、酒蔵による味わいや製法の説明にも目を通してみましょう。
名称とラベル情報をセットで見る習慣がつくと、日本酒の違いを理解しやすくなります。
迷ったときに見るべき3つのポイント
初めて選ぶときに確認したいのは、「特定名称」「精米歩合」「酒蔵が説明する香り・味わい」 の3点です。
まず特定名称から大まかな造りを理解し、精米歩合で米の磨き方を確認します。そのうえで、商品の香りや味わいについての説明を見ると判断しやすくなります。
この3点を手掛かりにすれば、「純米吟醸だから自分に合うはず」と名称だけで判断するのを避けやすくなります。
迷ったらラベルの3点を順番に確認
特定名称を見る
まず、大まかな造りを理解します。
精米歩合を見る
米の磨き方を確認します。
酒蔵の商品説明を見る
商品の香りや味わいについての説明を確認します。
特定名称だけで自分に合うと決めず、3つの情報をあわせて候補を絞るのがポイントです。
実際の商品を見ると、違いはさらに理解しやすくなります。ここでは優劣を比べるのではなく、「ラベルや公式の商品説明を確認する具体例」として3種類を見てみましょう。
特別純米の例として確認しやすいのが 一ノ蔵 特別純米酒 辛口 です。現行の公式商品情報では精米歩合60%とされており、「特別純米」という名称と精米歩合を実商品で確認できます。名称だけでなく、蔵元が示す仕様まで合わせて見る練習にも向いています。一ノ蔵公式オンラインショップで商品情報を見る
純米酒の具体例としては 大七純米生もと があります。公式商品情報では超扁平精米69%とされており、「現在の純米酒には精米歩合○%以下という数値要件がない」という点を実商品から確認できます。特定名称と精米歩合を別々の情報として見るのがポイントです。大七公式オンラインショップで商品情報を見る
純米吟醸の例としては 久保田 千寿 純米吟醸 があります。公式情報では精米歩合が麹米50%・掛米55%で、純米吟醸として販売されています。純米吟醸という名称だけで味を決めつけず、精米歩合や蔵元の商品説明も合わせて確認すると、自分に合うか判断しやすくなります。朝日酒造公式オンラインショップで商品情報を見る
よくある疑問

特別純米と純米吟醸はどちらが上?
単純な上下関係はありません。
純米吟醸酒は「精米歩合60%以下+吟醸造り」などの要件を持ちます。一方、特別純米酒には、特別である旨を客観的事項によって説明表示する要件があります。
どちらが自分に合うかは、名称の格ではなく、実際の香りや味わい、飲み方から判断するのが適切です。
特別純米酒のほうが純米酒より高級?
「特別純米」という名称だけから、純米酒より高級・高品質だと一律に判断することはできません。
表示基準上、特別純米酒には通常の純米酒とは異なる要件があります。ただし、小売価格や飲み手にとってのおいしさの順位を定める名称ではありません。
精米歩合60%なら必ず純米吟醸になる?
いいえ。
純米吟醸酒には精米歩合60%以下だけでなく、吟醸造り という要件があります。精米歩合60%以下の純米酒だからといって、それだけで純米吟醸酒になるわけではありません。
同様に、精米歩合60%以下だから自動的に特別純米酒になるわけでもありません。それぞれの表示要件を満たす必要があります。
純米吟醸のほうがおいしい?
おいしさは好みによるため、純米吟醸だから必ず純米酒や特別純米酒よりおいしいとはいえません。
香りを重視する人が純米吟醸を好むこともあれば、料理との相性や実際の香味から純米酒や特別純米酒を好む人もいます。
特定名称を「品質ランキング」と考えるのではなく、自分の好みに近い日本酒を探すための情報として活用するとよいでしょう。
まとめ

特別純米・純米・純米吟醸の違いを理解するには、原料・精米歩合・吟醸造りに加え、特別純米酒の説明表示要件 を確認することがポイントです。
純米酒には現在、精米歩合の数値要件がありません。純米吟醸酒は精米歩合60%以下で、吟醸造りを行うことが要件です。
特別純米酒は、香味・色沢が特に良好で、使用原材料や製造方法などの客観的事項によって特別である旨を説明表示するものです。精米歩合を特別である理由として説明表示する場合は、60%以下であることが求められます。
一方で、「特別純米だから上」「純米吟醸だから必ずフルーティー」と考える必要はありません。
日本酒を選ぶときは、特定名称を造り方を知る手掛かりとして使いながら、ラベルに記載された精米歩合や酒蔵の商品説明も確認してみてください。
それぞれの違いを理解できれば、名前の格ではなく 自分の好みに合う一本 を選びやすくなります。
